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2015年6月 3日 22:34

 

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2015
映画祭そのものを若手クリエーターのすべてにする

文/河西隆之

01.jpg映画祭実行委員会会長の上田清司埼玉県知事
 世界に先駆けてDシネマ(デジタルシネマ)に対象を絞った国際コンペティション映画祭として2004年から開催し、今日では若手映像クリエイターの登竜門として注目を浴びる「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2015」の記者発表が6日(水)、都内で行われ、全上映作品のラインアップと関連イベントが発表された。記者発表では、同映画祭出身監督である福山功起監督が手がけた新作『鉄の子』のオープニング上映と、映画祭史上初となるコンペティション部門のサテライト上映が、今回の見どころとなる新企画として紹介された。

 映画祭の実行委員会会長である上田清司埼玉県知事は新企画への意気込みを語った。「12回目の今年はこれまでの枠を超えて新たな企画を用意しました。そのひとつは、オープニン作品を映画祭出身の若手クリエーターの作品としたことです。実行委員会が若手クリエイターと敏腕プロデューサーをマッチングし、製作費やロケ地の提供などの支援を行ない、良質な作品を作って上映する。まさに映画祭そのものを若手クリエーターのすべてにするという企画であります。今年のオープニング作品は福山功起監督の『鉄の子』です。

 もうひとつはコンペティション作品のサテライト上映です。さいたま市内の『彩の国さいたま芸術劇場』と鴻巣市の『こうのすシネマ』で短編部門の作品の上映をしたいと思っております。こうしてできるだけ多くの方々に見て頂くチャンスを作っていこうと考えております」。

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オープニング上映作品となる福山功起監督の『鉄の子

 福山監督は映画祭出身監督と紹介されるだけにSKIPシティとは縁が深い。『アタシヲ産んだアイツ』(2008年)、『わらわれもしない』(2012年)が、それぞれSKIPシティ国際Dシネマ映画祭短編コンペティション部門にノミネートされたほか、さらに2013年には、SKIPシティ彩の国ビジュアルプラザを拠点に活動する映像クリエイターをプロデュースする支援プログラム「GO-allプロジェクト」のもとで製作されたオムニバス映画『埼玉家族』のオープニングとエピローグ、およびその一編『ハカバノート』を監督している。

02.jpg福山功起監督
 記者発表には福山監督も登壇し、「『鉄の子』と言いますと鉄道が好きな方々のことも"鉄の子"というんですが、今回、川口が舞台ということで、いわゆるキューポラ、鋳物工場で有名な川口の鉄、それと同時にいつまでたくましい子どもの気持ち、そういったものを鉄と例えて家族の物語を繊細に描かせていただきました」と映画祭の開催地である川口市と作品のつながりを解説した。

 今年の長編部門(国際コンペティション)には、世界74の国と地域から469本の応募があり、その中から海外作品9本、国内作品3本の計12本が上映される。一方、短編部門(国内コンペティション)には、134本のエントリーがあり、12本がノミネートされた。また昨年新たに設けられたアニメーション部門(国内コンペティション)では、応募された81本の中から選りすぐりの14本が上映される。

 記者発表では各部門の審査委員長からの挨拶もあり、部門毎に異なる傾向や見どころが告げられた。堀越謙三長編審査委員長は、「皆さんが想像される以上に、若いクリエーターや学生が目指す映画祭は、多分日本ではこの映画祭がいちばんなんだと思います。数年前はゆうばり(国際ファンタスティック映画祭)を目指したんですが、今は圧倒的にSKIPシティ(国際Dシネマ)映画祭を目指す若手が多くなりました。さらに今後は海外の若い人たちもどんどん応募してくれるような、そういう映画祭に育っていくことを期待して、今年お力添えができればと思っています」と近年の若手クリエイター動きを分析した。

03.jpg桝井省志短編審査委員長
 桝井省志短編審査委員長は、「私たちが作る映画は商業映画です。時代をとらえるというよりも自分たちの職業としての映画を追求しています。しかし、この映画祭で私が拝見する短編映画は、その直前に作られた作品であり、今、何を映像としてとらえなきゃいけないかというものをちゃんと見つけ出せた作品であると思います。同じ作り手として大変に刺激的で、審査するという偉そうな立場ではなく、あらためて自分たちの作る映画も含めて、反省をさせられたり、学ばせていただいたりしているというのが正直なところです」と短編ならではの特徴を引き合いに出した。

 最後に和田敏克アニメーション審査委員長は、「アニメーションというと、劇場用の長編やテレビシリーズのイメージが一般的ですが、今回の部門は30分以内の短編なんですね。短編アニメーションというのは、ひとりでコツコツ作る作家的な作品が多い世界で、ストーリーというよりは、絵を動かす喜びにあふれた作品が多い。今回選ばれた作品も、若い子たちが頑張っており、こんなのいままで見たことないといった映像がいっぱい集まってきています」とまだ新しい部門に大きな期待を寄せた。

 今年で12回目を迎えたSKIPシティ国際Dシネマ映画祭。映画祭を継続開催する大変さは並々ならぬ努力と強靭な意思が必要となるだろう。そんななか、『鉄の子』のプロデューサーも務める桝井短編審査委員長が口にした本映画祭を根底で支えている川口市の気質が印象に残った。

 「『鉄の子』は川口市内でロケをしているんですが、川口は職人の町なんですね。職人さんたちがたくさんいらして、その人達が一人ひとり自分たちの技量を磨いてものを作られている町であることを、恥ずかしながらやっと認識しました。こういう映画みたいな金にならないものを応援していただく気質というものが、なるほどここにあったんだなと学ばさせていただきました」。

 「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2015」は、7月18日(土)から7月26日(日)にかけて、埼玉県川口市にあるSKIPシティにて開催される。