mono-logue

2014年3月13日 15:52

 

【大阪アジアン映画祭】
日本語も飛び交うタイのラブストーリーは
ひと味違うビタースイート

文/須見登志美

sugoi_hanataba_dai.jpg
左から越中睦士さん、スパナート・チッタリーラーさん、セータポン・ピヤンポーさん、タンワーリン・スカピシット監督
 3月7日(金)、日本プレミアムとなるマー・ジーシヤン監督の『KANO』で幕を開けた第9回大阪アジアン映画祭。

 今年もアジア各国から選りすぐりの映画が上映されているが、タイGTH社のミニ特集が組まれた昨年と異なり、私のお目当てのタイ映画は、残念ながらコンペティション部門に参加する1本のみ。

sugoi_3_1.jpg『すご~い快感』
 しかしその貴重な1本『すご~い快感』(Fin Sugoi)は、タイ本国でもまだ上映されていないワールドプレミアムとあって、「見逃してなるものか!」と勇んで大阪に乗り込んだ。

 3月8日(土)朝10時。テイジンホールのロビーで開場を待つ観客に混じって、"Fin Sugoi"のロゴTシャツを着たタイ人が何人もいるではないか。さすがワールドプレミア上映。

 会場にはタンワーリン・スカピシット監督と、ほぼ本人役で出演した越中睦士(MAKOTO)さん、スパナート・チッタリーラーさん、セータポン・ピヤンポーさんの4人も登場し、上映後にはQ&Aが行われた。

kantoku_1.jpgQ&Aで質問に答えるスカピシット監督
 物語の主人公は大学生のヌーナー(サーイパーン・アピンヤー)だ。彼女は日本のロックバンド†яi¢к(トリック)のボーカルMAKOTO(越中睦士)の熱狂的ファン。いつかMAKOTOと特別な関係になることを妄想している彼女はそのことが原因で、恋人のクローン(スパナート・チッタリーラー)といつも喧嘩をしてしまう。そんなある日、トリックのミュージックビデオの出演者募集があり、応募したヌーナーは見事にヒロインに選ばれ、MAKOTOに急接近していく。MAKOTOに惹かれながらもクローンを忘れられず気持ちがゆらぐヌーナーを中心に、彼女のことを支えるルームメートのハム(セータポン・ピヤンポー)をはじめ、友人達それぞれの思いが微妙に交錯し、ちょっと切ない青春ラブストーリーが展開される。日本人が主演の一人を務めているだけでなく、渋谷や日光でも撮影されており、日本語のセリフも多い。実際に†яi¢кは長年タイでライブ活動をしており、タイ国内での人気も高く、映画はそのあたりのリアリティにもこだわったつくりとなっている。

 前作『愛なんていらない』(2012)でトランスジェンダーの愛と苦悩を叙情的に綴ってタイ国内外から高い評価を得たタンワーリン・スカピシット監督は、自身もトランスジェンダーであることを公言。その作品には独特の世界観がありファンも多い。『すご~い快感』は、前作とうってかわったハイテンション青春ラブコメであるが、そこには異性愛と等しい重さで同性愛が描かれており、監督のかわらぬまなざしが感じられる。Q&Aでは、実は松山ケンイチのファンであることを越中さんに暴露されて照れるという、微笑ましい場面もあった。

上映終了後ロビーで行われたサイン会
 そういえば、今回見た7本のうちコンペティション部門の作品は、タイ、台湾、フィリピン、香港の4本だったのだが、そのすべての作品で同性愛が扱われていたのにはちょっと驚いた。それだけアジアのどこの国でも同性愛が以前よりずっと身近なテーマになっているのだろう。または、愛について描こうとするとき、同性愛の方がその本質に迫りやすいのだろうか。

 映画祭のお楽しみのひとつは、俳優や監督などその映画を作った側の方々と直接コミュニケーションできることだ。Q&Aに登壇した4人の豪華ゲストは、その後ロビーで公式パンフレットへのサイン会に応じてくれた。スパナート・チッタリーラーさんはタイ人らしいイケメン男優だったが、強烈に輝いていたのはハム役のセータポン・ピヤンポーさん。女優さんだが、かなりハンサム! 風男塾系のそのさわやかな笑顔にすっかりやられてしまった。劇中アコースティックギターを弾きながら歌うシーンがあるのだが、エンディングテーマソングも含めて実際に彼女が歌っていると、Q&Aで答えていた。

 タイでは、3月14日(金)から同監督のホラー・ラブコメディ"トゥー・カオ・ラオ・ピー"が公開され、『すご~い快感』はその後の公開となる。タイと日本のコラボレーションとなった映画が、タイでどのくらい受け入れられるか、とても楽しみだ。