mono-logue

2013年10月28日 18:43

 

プロデューサー、ちょっとロスまで来てみました。その2

文/三宅はるえ

Film Incentive:日本はこのままで大丈夫?

incentive2.jpgフィルム・インセンティブのある国
  「日本のtax incentiveは何%?」。ロスにいる間、挨拶のように何度この質問をされただろう。特にカナダやイギリスといったtax incentiveシステムが確立している国の方々は、制度の素晴らしさをアピールしながら聞いてくる。その度に、「残念ながら、日本にはまだ無くて......」という返事をせざるをえない。

 Film Incentiveとは、コンテンツのプロダクション誘致を目的として、その国や地域で製作された作品の製作費、もしくは納税額の何%かが控除/還付される優遇システムである。Refundable Tax Credits、Transferable Tax Credits、Rebatesなど製作費ベースのもの、納税額ベースのものといくつか種類があり、優遇方法も一度納付してから還付されるケース、関税・納税を先に免除するケースなどに分かれている。この制度を利用するには、それぞれの国によって、製作費がいくら以上、現地で使用する費用の下限、何日以上撮影する、何%以上現地雇用を使用する、控除上限額など細かい適用条件がある。

 映画やドラマの撮影(ポスプロ含む)を誘致するメリットとしては、まず"製作費がその国・地域に落ちる"ことが何よりも大きい。撮影隊が現地で一定期間撮影することで、宿泊、食事、交通、機材といった費用は現地に落ちる。また数カ月~年にわたる現地スタッフの雇用創出も大きなポイントになる。ハリウッド映画がロサンゼルスだけでなく、東欧やカナダで撮影したりするケースが増えているのは、アメリカより撮影コストが安いのと同時に、こうしたFilm Incentiveのメリットを享受できるということが背景となっている。これは規模の大きな作品になればなるほど、そのチームや滞在期間や投下費用も大きくなるわけで、『ロード・オブ・ザ・リング』や『ホビット』シリーズの撮影では、累計数百億円という製作費がニュージーランドで使われた。

 コンテンツ誘致のもう一つのメリットは、作品公開後の観光誘致につながること。映画やドラマを見て、あの撮影地に行ってみたいと思った観客が現地に足を運ぶ。その時点で渡航、宿泊、食事含め現地の観光産業が潤う。
 加えて、映画製作、観光を通して使われた費用からの税収。何%かが控除/還付といった形で優遇されたとしても、その残りだけで相当な金額となる。

 では、日本はどうなの? というと、tax incentiveはないし、撮影にも非協力的だし(このことは次回書いてみます)といったネガティブな印象。「日本で撮影するメリットがないのだったら、最近、制度自体も変わってきた台湾で撮影しよう!」「韓国とか、マレーシアは元気だよね」「優遇制度の確立している国に日本っぽい街並み作っちゃおう!」といった別案はいくらでもあるのだ。

 その分野に詳しい何人かにご意見を聞いたところ、日本の税制を変えるのはとても難しく、だから助成金や補助金という形で対応しているのだという。けれど、助成金・補助金というシステムはtax incentiveとは明らかに別物であると思う。私も、「代わりに日本には合作への補助金があるよ」という話を海外のプロデューサーにしたところ、「助成金は、tax incentiveのように条件を満たせば必ず適用されるものではなく、条件を満たした上に選考審査があるのでおりるかどうか保証がなされない」とか、「(日本の予算年度4月~3月までという)期間が設けられているけれど、映画制作に日本の年度予算は関係ないよね?」と、確かに......と思う点を指摘された。

 私がこの夏ロスで一番感じたことは、このままだと日本に海外からはロケに来なくなってしまう......という危機感。tax incentiveのシステムや国レベルでのコンテンツ誘致が遅れているが故に、億単位のお金を失っていることを早くなんとかしなくちゃ、と思うのです。

 続く。

 「プロデューサー、ちょっとロスまで来てみました。」その1はこちら