cata-logue

2013年1月 5日 23:47

 

過去と現代のコラボはサステナブルで刺激的

文/関口裕子
248032.jpg エコロジーとエイジングの思想によってデザインさ
れた「ゲンテン」の伊勢型紙限定袋型バッグ

 江戸と現代のコラボレーションを見つけました。

 ところは伊勢丹新宿店で開催中の新春の「伊勢型紙フェア」。古くから着物などの染色に用いられてきた伊勢型紙の文様を使った、現代のクリエイターによる三越伊勢丹オリジナル商品に。

 伊勢型紙とは、柿渋加工の和紙に文様を彫刻したもので、着物を染める原版となるものだそう。"伊勢"の名が示すように紀州藩(三重県と和歌山県)の特産工芸品であった伊勢型紙は、江戸時代、徳川紀州藩の祖・徳川頼宣(享保の改革を推進した八代将軍吉宗の祖父)の政策により、型紙販売における様々な特権を与えられた伊勢商人によって全国に広がっていきました。徐々に豊かさを増し、円熟した文化期を迎えた元禄時代には、細かく意匠を凝らしたこの伊勢型紙の小紋が武士や商人の間で人気を博し、需要をさらに増したようです。

 今回の企画に使われたのは、伊勢丹が保存してきた約3000枚の伊勢型紙。伊勢丹というからには、かつて伊勢にあった本店(伊勢丹の創業は神田旅籠町なので伊勢ではありません)から受け継いだ伊勢型紙なのかと思いきや、さにあらず。昭和30~40年代に収集したものなのだそう。

 三越伊勢丹は昨年1月、伊勢丹の研究所が約50年前、社員教育のために制作した「日本の染織フィルムライブラリー」なる、今は亡き人間国宝の伝統技術が収められた貴重な映像資料を発見したという報道をしていました。人の暮らしにかかわる様々な商品を、時代、時代に、よりよい質と形で提供することに骨を折ってきたデパートメント・ストア。すでに販売された商品は換金され、利益となりましたが、それを商品化し、陳列・販売させるに至る努力を支えた調査や資料もまた間接的な利益であることに気づいたわけです。そして倉庫に眠るそれらに再び価値を見出し、現代が欲する商品へと変換させた。それは永遠に失われない価値、または時代をつなぐ価値感のリレーとも言える、サステナブルな発想なのではないかと思う次第です。

 この伊勢丹保存の伊勢型紙1600枚を収めた「日本の型紙 ISE KATAGAMI」(パイインターナショナル刊)というアートブックが、1月22日にCD付で出版されます。すでに伊勢丹新宿店、日本橋三越本店、銀座三越店で先行発売されており、3,780円という値段にもかかわらず、好調な売れ行きだそうです。

 なんだか伊勢丹の宣伝みたいになってしまいましたが、年頭にいい刺激を受けたのでご紹介してみました。伊勢丹新宿本店では、「ゲンテン」のバッグや「Yasutoshi Ezumi」のタイツ、「ふふふ、ふろしき祭。」の風呂敷、越前市「漆琳堂」の漆器、「IYASHI-YA×廣瀬染工場」のスローケット、加賀蒔絵工房「漆工芸大下香仙工房」の万年筆ほか多くのクリエイターや伝統工芸工房によるコラボ商品が販売されています。また三越銀座店、日本橋三越本店でも別途展開中。なおこの伊勢型紙フェアは、残念なことに1月8日(火)までだそうです。お知らせが遅くてすみません。

 この企画とはまったく別物ですが、紀州・尾張・井伊の江戸屋敷があった紀尾井の地にある「江戸伊勢型紙美術館」で、1月20日(日)から春の伊勢型紙特別展「春の饗宴」なる催しを開催するほか、アンティーク伊勢型紙の販売も行うそうです。興味のあるかたはぜひこっちものぞいてみてください。詳しくはこちら