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2012年11月19日 11:00

 

海外市場における日本映画――AFMでの評判と需要

文/石橋朋子
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 10月31日(水)から米カリフォルニア州サンタモニカ市で始まったアメリカン・フィルム・マーケット(AFM)。この北米最大の映画市に参加した日本の各映画会社の海外セールス担当者の表情は、これまでのように一見して明るいものではなかった。リメイクもあった10年前のJホラー『リング』『呪怨』のブームとは異なり、『おくりびと』がアカデミー賞外国語映画賞を受賞したことで期待値を上げたドラマ型の日本映画のセールスは期待のまま終わり、次なる決め手を欠いていた。

 最も顕著に現れていたのは、試写の数と規模だ。通常、AFMの試写はサンタモニカの目抜き通りにある、収容者数200人規模の一般の映画館を会場としている。プリントが間に合わない場合には、会場のホテル内に設置された仮設試写室を利用することもあるが、DVDでのプロジェクター投影で画質も悪く、音の質は言わずもがな。収容者数は部屋の大きさにより、10~20人といったところだ。それが今年のAFMでは、劇場での試写を行ったのはほんの数社で、残りは試写をしないか、ホテル内での仮設試写を行っていた。劇場で試写を行っても訪れるバイヤーが少なく、採算が合わないことがその理由だ。

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 劇場で行われた松竹の『天地明察』の試写に足を運んでみたが、訪れたのはたった1人(と書いたものの、これはマーケットでは珍しくない光景)。この『天地明察』の試写に訪れた香港のバイヤーは『おくりびと』の興行が香港で成功したため、同じ滝田洋二郎監督作品ということで見に来てみたということだったが、「時代劇はドラマだと日本以外では難しい。(『天地明察』の)プロダクション・バリューはあるが、ストーリーが日本人に特化した内容で、日本人には身近に感じられるかもしれないが、外国人には伝わりにくい」と話していた。

 実際、アジアはともかくヨーロッパ諸国では、日本の映画の買い付けにはホラーとアクションの、いわゆる"ジャンルもの"と呼ばれる作品にのみ焦点を当てているようだ。あるドイツのバイヤーは「日本映画は劇場公開が難しいので、DVD向けのタイトルを選んでいる」と話す。つまりDVDやレンタルで回し易いジャンルものとして、「バイヤーは『アクションが50%以上を占める作品』を探している」(TBS担当者)ため、時代劇でも比較的アクションの多い『のぼうの城』や『るろうに剣心』といった作品は引きが強いようだ。特に、『るろうに剣心』は原作も諸外国で知られていることから、仮設試写では10人分の座席が満席になっていた。

 やはり日本のジャンルものは海外での実績があり、監督も知名度があるため、バイヤーも手を出し易い。前作『十三人の刺客』が海外で高評価を得ていた三池崇史監督の新作『悪の教典』に至っては、「広告を見て、しばらく連絡を取っていなかったヨーロッパのバイヤーからも問い合わせがありました」(東宝担当者)という。三池監督と並ぶ日本のホラーの巨匠、中田秀夫監督と清水崇監督の新作も今回のAFMでプリセールにかけられており、まだ映像を見せられる段階ではないものの、まずまずの反応があるようだ。

 ジャンルものではないドラマ作品の市場は、『おくりびと』のように大きな映画祭で受賞するなど快挙をあげ、知名度をあげないかぎりヨーロッパでの劇場公開は難しいようだ。ただしアジアでは、香港で昨年公開され、「ハリウッド映画を含む外国映画の年間興行成績で20位以内につけた」(東宝担当者)という『告白』のような例もある。「『告白』は特別な作品でした。原作も売れていましたし、ストーリーにエッジがあって物議をかもしました」(前出の香港のバイヤー)。こういった影響もあり、今年のAFMでは『告白』の原作者、湊かなえの小説「往復書簡」収録の「二十年後の宿題」を基にした映画『北のカナリアたち』のセールスが、「かなり好調」(東映担当者)だったという。

 日本映画の海外輸出を狙うなら、決め手は「ホラーかアクションのわかりやすい"ジャンルもの"であること」、「クリエイターの知名度があること」、「映画と原作の両方からファンを掴むこと」の3つと言えるかもしれない。