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2012年11月16日 12:00

 

「クラウドファンディングは本当に映画を救うのか?」
という大きなタイトルのシンポジウムに参加して

文/関口裕子

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 第9回文化庁映画週間シンポジウム-Movie Campus-では、10月26日(金)「クラウドファンディングは本当に映画を救うのか?」と題したシンポジウムを行った。

 パネリストとして、『ハーブ&ドロシー50×50』の製作資金をクラウド・ファンディングで調達する佐々木芽生監督、日本のクラウドファンディングプラットフォーム「MotionGallery」を主宰する大高健志さん、『ジョゼと虎と魚たち』『ノルウェイの森』ほかのプロデューサーであり、ブリッジヘッド代表の小川真司さん、米大手クラウドファンド「Kickstarter」で東京国際映画祭参加作品『ストラッター』の資金を集めたカート・ヴォス監督、映画のマーケティングリサーチ&戦略立案などを行うGEM Partners代表の梅津文さんと、クラウドファンディングの主宰者、利用者、映画の資金調達、マーケティングのプロらが参集。クラウドファンディングのよりよい活用方法や、同スキームを利用した映画の資金調達の未来について話し合った。

 ここではシンポジウムの冒頭で行った「クラウドファンディングとはなにか?」というベーシックな解説を掲載する。

 パネリストの方々から出た現実に即した提案や意見は、文化通信さんやCreator's Parkさんの記事をご参照いただきたい。

 また、支援者となる映画鑑賞者へのインターネットアンケート結果から、クラウドファンディングの現状と未来像を示した梅津さんのプレゼンテーションはこちらで読むことができる

クラウドファンディングのタイプ


種別概要小額資金サービス例
融資型金融機関が利息(金利)を得る目的で会社、個人などの資金需要者に金銭を貸し出す資金提供。ソーシャル・レンディングKiva、マイクロファイナンス貧困削減投資ファンドなど
maneo、SBISL、AQUSH、Vehiclesなど
投資型投じたお金が経済活動に使われることによって得られる利益を、元本保証なしの配当という形で見返りとする資金提供ミュージックセキュリティーズ、みんなのファンドなど
購入型リターン(PLEDGE=誓約)を、製品やサービス、クーポンなど金銭以外の形で得る、新しい形の商取引。資金提供には寄付的な意味合いが強いKickstarter 、キャンプファイヤー、Motion Gallery、READYFOR?、マイクロメセナ、WESYM、Cerevo DASHなど
寄付型社会貢献であり金銭的見返りはない。リスティング、マッチング、ニ方向型のギフト、パック、奉加帳、ポイント利用など、さまざまなタイプの寄付サイトが増加GiveOne、YAHOO!ボランティア、コペルニク、オックスファム、エコシス、アリーナ、イーココロ!、クリックエイドなど

クラウドファンディングの仕組み


クラウドファンディングとは、群集 (Crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語。
ネットを通じて多くの支援者から資金を調達し、事業や創作活動を実現する。

  • 事業者およびアーティスト(プロジェクト)は、クラウドファンディングプラットフォーム運営会社が構築したサイトのネットワークを活用し、プレゼンテーションを行う。
  • 支援者は、インターネットを通じて、事業者やアーティスト(プロジェクト)に(小額の)出資を行い、応援することができる。
  • 事業者およびアーティスト(プロジェクト)は、支援者に対して実績や想いを訴え、共感を得ることで、事業単位の資金を集めることができる。
  • 事業者およびアーティスト(プロジェクト)は、成果物を自分の権利のもとで管理できる。

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急拡大するクラウドファンディング


  • 米国でミュージシャンの支援スキームとして始まる
  • 日本でもミュージックセキュリティーズが同様の目的でローンチし注目される
  • 東日本大震災以降は「クラウドファンディング」の中でもソーシャルビジネスが拡大

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2000年 クリエイターのための資金調達プラットフォーム、ローンチ


  • 組織概要
    • 役割:ミュージシャンのための初の資金調達プラットフォーム
    • 会社名:ArtistShare
    • 所在地:311 W. 72nd St,1E,New York, NY 10023
    • 設立日:2000年
    • 資本金:1000万ドル
    • 創始者:ブライアン・カメリオ
    • ホームページhttp://artistshare.com
  • 事業内容
    • 資金調達が難しいインディーズのミュージシャンのためにファンからプリセールの形で資金調達する方法を考案。目標額を達成できなくても集まった金額はミュージシャン側に渡される
    • ArtistShareは独自のレコードレーベルを持ち、発掘したミュージシャンのソフトの販売、プロデュースや育成も行っている
  • トピックス
    • 後続の音楽系資金調達サイトSellaband(2006)、SliceThePie(2007)、IndieGoGo、Spot.Us(2008)、Pledge Music、Kickstarter(2009)の設立に大きな影響を与えた
    • 創始者のブライアン・カメリオはこの資金調達方法の創案者とされているが、現在、Kickstarterとそのパテントをめぐって係争中である


2001年 日本で画期的ミュージシャン支援マイクロ投資サイト、スタート


  • 組織概要
    • 役割:ミュージシャンのためのマイクロ投資プラットフォーム
    • 会社名:ミュージックセキュリティーズ株式会社
    • 所在地:東京都千代田区丸の内一丁目1番地3号
    • 設立日:2001年11月26日 資本金:1億4,510万5,300円(2008年8月1日現在)
    • 代表者:小松 真実
    • 主要株主:小松真実、東京海上キャピタル(株)、ウィルキャピタルマネジメント(株)、住友商事(株)、明治キャピタル(株) 他
    • 営業所:東京都千代田区丸の内1-5-1 新丸の内ビルディング
    • 電話番号:03-5948-7301
    • ホームページhttp://www.musicsecurities.com/
  • 事業内容
    • 知的財産の証券化業務と、証券化を通じて形成された投資家・顧客コミュニティと連携したマーケティングプローモーション

    • 文化資産証券化事業
      • 音楽ファンド「ミュージックセキュリティーズ」
      • レストランファンド「東京レストランファンド」
      • 純米酒ファンド「全量純米蔵を目指す会」
      • 復興ファンド「セキュリテ被災地応援ファンド」
    • 音楽事業
      • 音楽レーベル、アーティストマネジメント、携帯音楽配信サイトの運営など
    • 登録会員数
      • 約2万人(音楽、レストラン、純米酒合計)
  • 経緯
    • 2000年3月、「もっと自由な音楽を!」との思いを実現するために、 2000年12月小松真実氏が合資会社ミュージックセキュリティーズを設立。第1号音楽ファンド「BOLERO-1」を2001年1月に募集を行う。その過程で多くの協力者に恵まれ、2001年11月にミュージックセキュリティーズ有限会社を設立。その後、さらにミュージックセキュリティーズの社会的意義に共感したベンチャーキャピタルからの出資を経て、2002年5月に株式会社化


2008年 日本では経済産業省および経済団体が動く


経済産業省は、幅広くソーシャルビジネスを推進していくため、2008年4月に「ソーシャルビジネス研究会報告書」を公表し、事業環境整備、人材育成、集まる場の創設など、様々な施策に取り組んでいる。

【例】
  • 2010年「平成22年度 地域新成長産業創出促進事業(ソーシャルビジネス/コミュニティビジネス連携強化事業)」の一環として、ソーシャルビジネス推進研究会を設置
  • 2011年ソーシャルビジネス・ケースブック ~地域に「つながり」と「広がり」を生み出すヒント~ 策定

  • Social Ecoo(ソーシャル・エコー)設置
    • 内容:ソーシャル・アントレプレナー(社会起業家)や社会的企業などソーシャルビジネスに関心を持つ人々が、ネットワークづくりや事業を推進するにあたり、役立つ情報を集めたソーシャルビジネス総合情報サイト
    • 特徴:Ecooデータベースに登録することで、Social Ecoo上での情報発信が可能になる。ソーシャルビジネスに興味を持つ一般の閲覧者は、社会的企業やソーシャル・アントレプレナーの基本情報やこれまでの活動履歴、最新の活動情報、メッセージなどをデータベース画面で閲覧することができる。逆に社会的企業やソーシャル・アントレプレナーは自身のPRや、活動情報の発信をこのデータベースから行うことができ、ソーシャルビジネスをサポートする全国の支援組織を探すことができる
    • サイトカテゴリー:イベント・セミナーに参加する/仕事を探す/商品・サービスを知る/情報を発信する
    • 運営組織名:一般社団法人 ソーシャルビジネス・ネットワーク(SBN)
      • ソーシャルビジネス(SB)による新しい社会づくりのため、社会的企業の立場で同じ志を持つ団体や個人が、知恵と力を結集させていく"日本初"で"日本発"となる経済団体。2007年度に経済産業省が行った『全国規模のSB推進に関する基本構想』に基づく「ソーシャルビジネス推進イニシアティブ」と、NPO法人ソーシャル・イノベーション・ジャパン(SIJ)とが合併したもの。
    • ホームページhttp://www.socialecoo.jp/index.html


2009年 Kickstarter始動


  • 組織概要
    • 役割:クリエーターの活動のための資金調達プラットフォーム
    • 会社名:kickstarter
    • 所在地:155 Rivington Street New York, NY 10002
    • 設立日:2009年4月28日
    • 資本金:1000万ドル
    • 創始者:ペリー・チャン、ヤンシー・ストリックラー、チャールズ・アドラー
    • 主要株主:Union Square Venturesほか
    • 営業所:155 Rivington Street New York, NY 10002
    • ホームページhttp://www.kickstarter.com/
  • 事業内容
    • 寄付的な意味合いを持つ小額資金提供であり、資金提供のリターン(PLEDGE=誓約)を、製品やサービス、クーポンなど金銭以外の形で得ることが特徴
    • 本来対極の概念である購入と寄付を、Kickstarterがつなぐ、新しい形の商取引でありパトロネージュ(new form of commerce and patronage)
    • 2010年末には、3910件の資金調達成功プロジェクトを持ち、その成功率43%、総計2763万8318ドルを記録。 2011年末には、1万1836件、成功率46%、総計9934万4381ドル。 2012年5月末には、2万件、成功率は44%、総計1億7500万ドル。現在は、3万1558件以上が資金調達に成功しており、成功率43.81%、総計3億4100万ドルに成長
    • 100万ドル以上の資金調達を達成したプロジェクトは15件(現在=2012/10/29)

  • 資金調達プロジェクト例
    • RPGゲーム "Wasteland 2"
    • iPhoneをロボットにする充電スタンド "Galileo - Your iOS in Motion"
    • オープンソースのSNS "Dispora"6,479人から $200,642 調達
    • 革製品への写真プリントサービス "Lumi" 188人から $13,597 調達


  • 2011年 オバマ大統領、起業家支援
    「スタートアップアメリカ・イニシアチブ」発表


    2012年4月5日、米国においてJOBS 法(the Jumpstart Our Business Startups Act)が成立した。これは2011年1月31日オバマ大統領が発表した起業家を支援する「スタートアップアメリカ・イニシアチブ(Startup America Initiative)」を法制化したもの。

    同法は主に
    • 資本調達における規制緩和
    • 税制上の優遇措置
    • 移民ビザや永住権の取得 
    の3種類の施策で構成される。

    "クラウド・ファンディング・ウェブサイト"を活用する株式投資を解禁し、起業を促進することで、経済活性化、ベンチャーファイナンス活性化を期待する。


    拡大するクラウドファンディング


    • 欧米ではクリエイティブ支援が主流
      • 日本で「クラウドファンディング」プラットフォームサービスが増えてきたのは2011年。震災直後の3月に「レディフォー?(READYFOR?)」、次が6月の「キャンプファイヤー(CAMPFIRE)」がその嚆矢とされている。
      • 日本では震災後ということもあり、社会貢献型の実績が目立つが、欧米ではクリエイティブ系コンテンツ(キックスターターetc)が主流
      • 先行したイギリス、アメリカ、オランダ、フランス、ドイツ、オーストラリアなどに加え、最近ではブラジル、韓国、香港、インド、シンガポールなどでもサービスを開始している。
    • クラウドファンディングは急成長
      • 調査会社マスソリューションのリポートによると、2012年は全世界でクラウドファンディングによる資金調達額が28億ドルに達する見込み。2011年には15億ドル、2010年には850万ドル、2009年にはたったの5億3000万ドルだった。
      • キックスターターの場合、クリエイターが資金を調達する場であるが、最近では製品やサービスの発売前に需要をみるための役割や先行予約の場としても活用されている。全体の5%がこのようなプロジェクトで総売上の15%にもなる。


    映画の製作資金調達の増加


    • カンヌ映画祭出品作の1割
      • クラウドファンディングの影響が最も著しかったのは、 2012年のサンダンス映画祭とカンヌ映画祭。上映された映画の約1割はクラウドファンディングで資金を得ているという
      • Kickstarterを例にすると、資金調達に成功したプロジェクトの中で映画が占める割合は約25%。調達金額は7870万ドルで、資金調達に成功した全カテゴリーの22%となっている(2012年10月末)。 2009年1月には19764本だった参加プロジェクト数は、現在21281本に増加している
    • クラウドファンディングで資金調達した映画の一例