mono-logue

2012年7月20日 14:40

 

驚異の幼児演出術 その秘密は?

文/金田裕美子
little1.jpg『小さなユリと 第一章・夕方の三十分』   (C)2011 WITH LITTLE YURI PRODUCTION COMMITTEE

 凄い"子役"を見てしまった。『チャップリンのキッド』のジャッキー・クーガンからテンプルちゃん、過去最年少の5歳でカンヌ映画祭主演女優賞を受賞した『ポネット』のヴィクトワール・ティヴィソル、わがニッポンの突貫小僧から芦田愛菜ちゃんまで、古今東西、天才子役といわれた人は数多いけれど、ここまで幼い子役の"演技"は見たことない!と驚嘆したのが、第9回SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2012の短編コンペティション部門出品作『小さなユリと 第一章・夕方の三十分』に出演しているはなりちゃんだ。

 なんと、撮影時2歳。2歳といえば、そろそろ赤ちゃんを卒業したかな?という年頃。言葉はまだたどたどしく、育児学的にはやっと自我に目覚める時期だそうで、当然本人に「映画に出演して演技をしている」意識はないはず。にもかかわらず、ドラマの適所でむずかり、背中をのけぞらせて嫌がり、適所で御機嫌に遊んだり甘えたりするのだ。そりゃ嫌がることをすれば嫌がるし、好きなことをさせれば御機嫌になるでしょ、とも思うのだが、そんなに単純には見えない。母親の入院で、しばらく父と2人きりで暮らすことになった彼女の不安や苛立ちが、ちゃんと伝わってくるのだ。圧巻は、元アルコール依存症の父親の手から怒ってビールの缶を奪い取ろうとして泣くシーン。

  いったい何をどう指導すれば(というか仕向ければ)、こんな演技(というか動作)を引き出せるのだろう? 映画祭上映後のQ&Aで、和島香太郎監督がその種明かしをしてくれた。

①はなりちゃんは大のカルピス好きである。撮影の合間にいつもペットボトルに入ったカルピスをがぶ飲みしている。
②彼女の眼の前で、彼女のペットボトルからビールの空き缶にカルピスを移す。
③父親役の役者(本当のお父さん?)がそのカルピス入りビール缶を持って撮影スタート。
④自分のカルピスが飲まれちゃう! と思ったはなりちゃんがビール缶を奪い取ろうとし、失敗するや怒って泣き叫ぶ。

......名場面の裏に、こんな策略があったとは。

   『小さなユリと 第一章・夕方の三十分』は、黒田三郎の詩集「小さなユリと」を映像化した作品。タイトルに『第一章』とついているように、和島監督はユリの成長、家族の変化とともに続編を撮る予定だという。作品と同時に、はなりちゃんが今後どんな成長を遂げていくのか楽しみだ。



■関連サイト