mono-logue

2012年3月29日 16:00

 

『イ・ブル展』 ~私からあなたへ、私たちだけに~
アジアを代表する韓国女性アーティスト、初の大規模個展

文/ICHIRO KUMAKURA
 現代アートはお好きですか?

 六本木ヒルズの53階にある日本一高い(所にある、の意。値段ではありません)美術館、森美術館で現在開催中の『イ・ブル展』に行ってきました。

 とてもすばらしかったので、みなさんぜひ行ってみてください。お勧めです! 『イ・ブル展』。

アマリリスイ・ブル 「アマリリス」1999年 Photo by Rhee Jae-yong

 韓国の、女性の、コンテンポラリーアーティスト、イ・ブル さん。

 名前にも作品にも初めて出会ったが、その作品は緻密で繊細でしかも大胆でダイナミック、コンセプチュアルで完成度が高いというだけでなく、現代美術に初めて触れた人でも比較的容易に受けとめられる作品群だった。わかりやすい...(安直な言葉だ)というか、わかる気がする、彼女が表現したいものを感じることができる。

ほんとうは奥深いのだろうことは承知の上だが、わかる。でも言葉にはできない。

 でかい未確認物体のようなソフトスカルプチャー、未来都市のような見たこともないような/あるような世界、スカイツリーよりずっと素敵なタワーらしき建造物、白頭山の美しい風景、度肝を抜かれる...、テーマごとにイ・ブル作品は思ってたよりずっと大きくてダイナミックで繊細だ。おもしろい音の仕掛けもある。思わず口元が緩んでしまうような楽しい作品もある。

 イ・ブル初の大規模個展は過去から現在までのたくさんの作品を4つのセクションに分けて紹介している。
  • セクション1「つかの間の存在」
  • セクション2「人間を越えて」
  • セクション3「ユートピアと幻想風景」
  • セクション4「私からあなたへ、私たちだけに」

leebul_03.jpg イ・ブル 「サイボーグ W1」1998年 撮影:渡邉 修
 イ・ブル作品はグロテスクともいえるカタチをしたものが多いが、それはとても美しい。ほんとうに美しい。カタチを忘れてしまうくらいに。なぜだろう。

 初期のころ、世界が不合理で受け入れ難いものだと感じ自分自身に壮大な疑問を投げかけ、生きる道を探すという生涯にわたる大掛かりな挑戦を決心した彼女の創作の原点は、きっとイ•ブル自身に宿っていた「美」を自ら引き出したのではないか、と思う。インタヴューの中で彼女は、挑戦を始めたらブラックホールへ吸い込まれたが、実はその頃初めてアートの味をしめたのだ、と語っている。

 わかるとかわからないとか、そんなことはどうだっていい。

 アーティストは自分自身の中にないものは表現できないのだ(パクる人は別)。

 そして私たちには表現されたモノ(作品)からイ•ブルを探す、という楽しみがある。

 『ART』から何を感じるかはみんなが持っている自由だ。だけど《作品と自分》、《アーティストと自分》、《世界や宇宙と自分》を考えたり感じたりできる、ほんとうに贅沢な場所が美術館だ。

 そうゆうわけだから、『イ•ブル展』へ行ってみよう!