mono-logue

2012年3月19日 18:56

 

【大阪アジアン映画祭】
熱気を肌で感じるシネ・ヌーヴォの圧倒的近距離感!

文/河西隆之
namewee_m.jpg『ナシレマ2.0』を通じて多民族共存国、マレーシアの団結を訴えたナメウィー監督
 第7回大阪アジアン映画祭が3月9日(金)から18日(日)にかけて開催された。メイン劇場には大阪市福島区にある座席数300席ほどのABCホールが選ばれたが、観客が映画祭の熱気を肌で感じられたのは九条に構える約70席のミニ・シアター、シネ・ヌーヴォだったのかもしれない。

 映画祭のメイン部門であるコンペティション部門出品作は、上映後に監督やプロデューサー(主演が招かれる場合も!)を招いたQ&Aが行われたが、シネ・ヌーヴォも例外ではなかった。Q&AはABCホールのみという作品もなかにはあったが、多くの監督がシネ・ヌーヴォを訪れ、作品への熱意を観客に語ったのだ。

 Avanti Press編集部総出で押し掛けた大阪アジアン映画祭。ABCホールにとどまる他部員を尻目に、ひとりシネ・ヌーヴォに向かったわけだが、初めて訪れる場所に戸惑うばかり。なにせ、福島駅から九条駅に移動するために乗り換え案内で調べてみると、福島県の福島駅から京都府の九条駅への経路を示されてしまうのだから。大阪恐るべし。

 閑話休題。シネ・ヌーヴォは、先に述べたように座席数70ほどのミニシアター。ウッディな入口をくぐると、ロビーにはキネマ旬報が年代順にズラリ。大スクリーンで観たいという欲求には応えられないが、その分、Q&A時のゲストとの距離は圧倒的に近く、最前列なら1メートルもない。質問なぞ投げかけようものなら、耳を傾けるゲストの熱い視線に一瞬言葉を失ってしまうほど。作品鑑賞よりもさらに機会の少ない監督との出会いにこれほど絶好の場はない。

 『ナシレマ2.0』のナメウィー監督もシネ・ヌーヴォでQ&Aを行ったゲストのひとり。真摯に受け答えを行い、日本語が分からないながらもすべての質問者にジッと目を据え、うなずきながらその一言一言を大切そうに"受け取っていた"姿が印象的だった。そしてQ&A後も狭いロビーに立ち、ファン一人ひとりの言葉に熱心に耳を傾けており、生身の監督を感じられるひとコマとなった。

 ナメウィーの初監督作となった本作は、マレー語、タミル語、英語、果ては日本語まで飛び交う多言語、多民族映画。Q&Aでは、各言語毎に映画が作られるマレーシアの現状に周囲から「『ナシレマ2.0』にはマーケットがないと言われたが、成功を信じて製作を続けた。初監督作のためスポンサーが付かず、出演者のほとんどは俳優ではなく、知り合いの歌手なんだ」と苦労を打ち明けた。しかし、蓋を開けてみれば本作はマレーシアで大ヒット、大阪アジアン映画祭では来るべき才能賞に輝く栄光を手にした。

 ABCホールの大スクリーンで作品を全身で感じるのもよし。シネ・ヌーヴォで監督の生の熱意を圧倒的近距離で浴びるのもよし。大阪アジアン映画祭は、会場の違いも楽しめる映画祭なのだ。

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ナメウィー監督自ら主演を務めた『ナシレマ2.0』(C)Prodigee Malaysia