cata-logue

2012年3月19日 15:24

 

【大阪アジアン映画祭】
億万長者になれる タイのお守りプラクルアンの御利益

文/須見登志美
億万長者Q&A上映後に監督と主演のピーチ君が登壇し来場者からの質問に答えた
 第7回大阪アジアン映画祭で、コンペティション部門に出品されたタイ映画『トップ・シークレット 味付のりの億万長者』。日本では劇場公開されていないが、タイの若者なら誰もが知っている蒼井そら主演の大ヒット作『ハートはドキドキ夏休み』のソンヨット・スックマークナン監督の作品だ。ゲーム好きの高校生が、学業をそっちのけで次々事業に挑戦し、数々の失敗をしながら成長し、最後には味付けのりの製造販売で億万長者になる元気いっぱいのストーリーで、実話をベースにしている。

 主人公のトップはアイディアマンで自信家だ。怖いもの知らずで行動力がある。だが、彼が勝負しなくてはならない世界は狡猾な大人達の世界。どんなに自信があっても騙される。タイならではの象徴的なエピソードがある。お父さんからの学費援助を断ったものの、お金がない彼はお父さんの大切にしているお守りを学費のために質入れしてしまう。日本ではあまり馴染みがないが、そのお守りはプラクルアンという。仏様などの姿をかたどった小型の護符で、僧侶が祈祷したものは厄除けや現生利益を得られるお守りとして身につける。 専用のケースがあって、ネックレスのように首から下げられるのだ。仏像なのでそれ自体は華やかなものではないが、ケースは金色で派手だったりする。チェンマイを訪ねたときには大きなプラクルアンをいくつも下げたおじさんを何度も見かけた。

プラクルアン バンコクで購入したお土産用プラクルアン。一応裏にお坊さんが祈祷してくれたという印が赤マジックでついていた。いつの間にか消えたけど......
 タイではプラクルアンをつけていたお陰で九死に一生を得た人の話が新聞などで報道されたりする。ただしプラクルアンはそういった御利益だけでなく、マニアがいて、コレクション対象でもあるのだ。古くて希少なものは骨董品として数千万円で取り引きされるものもあるらしい。プラクルアンを扱う露天の軒先では、虫眼鏡を片手に皆真剣だ。日本でも仏教研究者でコレクションしている人に会ったことがある。高いものは手が出ないと言っていたが、珍しいプラクルアン探しは趣味と研究を兼ねたお楽しみのようだ。

 トップは精一杯ハッタリをかまして10万バーツ(約27万円)を借りるのだが、買い戻そうと再訪したときには、質屋の親父に300万バーツ(約810万円)と言われ騙し取られたことを知る。怒って奪い返そうとするトップに銃まで取り出すのだから、いかに貴重品かがわかる。お父さんの大切なお守りを奪われ、自分の甘さを思い知らされたトップは奮起し、一度は折れそうになった心を立て直して再びチャレンジを始める。億万長者になった彼は、あのプラクルアンを買い戻してあげたのだろうか。もっとも、お父さんにももうお守りは必要ないかもしれないけど。