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MONO-LOGUE 雑感 2016年6月 3日 01:44

 

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2016
世界中のいろいろな地域から時代の匂いを持った映画が見られる

文/河西隆之

01.jpg映画祭実行委員会会長の上田清司埼玉県知事
 デジタルの新たな表現の可能性に焦点を当てるとともに、次世代クリエイターの発掘と育成を掲げる国際コンペティション映画祭「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2016」の記者発表が6月2日(木)、都内で行われ、全上映作品のラインアップと関連イベントが発表された。埼玉県川口市のSKIPシティを中心に開催され、今年13回目を迎える本映画祭。登壇した映画祭実行委員会会長である上田清司埼玉県知事は、「いまや国内の97%の映画館がデジタル化し、撮影から上映まですべてデジタルで行われる時代になっております。このSKIPシティ映画祭がデジタルの先駆けを世界で最初にやりました。そういう意味での誇りを私たちはしっかりと意識している」と、デジタルシネマを標榜する映画祭としての矜持を見せた。

 今年の見どころのひとつとなるのが、映画祭実行委員会が主体となり、若手監督を抜擢し、オープニング作品として上映するプロジェクトの一環として製作された熊谷まどか監督の『話す犬を、放す』。同プロジェクトは昨年スタートし、第1弾は福山功起監督の『鉄の子』で、本作は第2弾となる。熊谷監督は2013年に『世の中はざらざらしている』で短編部門にノミネートされており、本映画祭との関係も深い。同作で初めて長編映画を手がけた熊谷監督と、主演のつみき みほ、田島令子が記者発表で意気込みを語った。

01.jpg『話す犬を、放す』主演のつみき みほ
 仕事のチャンスを掴みかけた女性レイコが、認知症にかかった母親ユキエの世話と自身のキャリアの両立に苦しむ姿を描いたという本作だが、熊谷監督は、「この作品はレビー小体型認知症という病気を扱っていはいますが、基本的にはクスっと笑って元気になれるようなコメディだと思っております。どこかの誰かの心に届けばいいなと思って書いた作品です」と重い題材ながらユーモアにあふれた作品であると紹介。娘のレイコを演じたつみきと、母ユキエ役の田島の言葉からもその雰囲気は感じられ、つみきが「脚本を読んだときからお母さんが魅力的だと感じましたが、実際の田島さんも素敵な方で、楽しくやらせていただきました」と話すと、田島は「可愛い監督、可愛いつみきみほさんとご一緒できて楽しくさせていただきました」と笑顔で返した。

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オープニング上映作品となる熊谷まどか監督の『話す犬を、放す』
©2016埼玉県/SKIPシティ 彩の国ビジュアルプラザ

 今回、映画祭は新たな試みとして、急成長を遂げる中国映画市場で異彩を放つインディペンデント映画の最前線を紹介する。「特別招待作品」として、第66回ベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞したヤン・チャオ監督の『長江図』と、タン・ダン監督の『I PHONE YOU』を日本初上映する。両作の上映に際し、映画祭実行委員会副会長を務める奥ノ木信夫川口市長は、「川口市は外国人の方が多く住んでいる街です。そのなかでも特に中国人の方が多いので、そういったところにも働きかけて、(映画祭に)来場していただこうかなと考えております」と、近年増えている外国人来場者数の増加に期待を寄せた。

 そして映画祭のメインとなるのが、コンペティション部門だ。今年の応募数は、長編部門715本、短編部門146本、アニメーション部門58本の計919と、昨年の684本から大幅に増加。応募国数は88の国と地域と過去最多となった。国際コンペティションとなる長編部門には、海外9作品、国内3作品の12本がノミネート。バヌアツが初参加となったほか、インド映画、キルギス映画が13回目にして初めてノミネートされた。国内コンペティションとなる短編部門、アニメーション部門のノミネート数は、それぞれ12本となった。

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左から氷川竜介アニメーション部門審査委員長、桝井省志短編部門審査委員長、八木信忠映画祭総合プロデューサー、上田清司実行委員会会長、奥ノ木信夫実行委員会副会長、岡田裕長編部門国際審査委員長、土川勉映画祭ディレクター

 記者発表では各部門の審査委員長からの挨拶もあり、各部門の特長や役割が告げられた。岡田裕長編部門国際審査委員長は、「多人数が参加して自分の技術を少しずつ映画に読み込んでいくという創作過程もあり、作られた時代を非常に色濃く打ち出してくるのが映画の特長であります。50人、100人で作られる過程で時代の匂いが反映し、いい映画が生まれてくるのだと思います。今回、世界中のいろいろな地域から時代の匂いを持った映画が見られるのが、審査すること以上に楽しみです」と、国際コンペティションならではの多様性に触れた。

 桝井省志短編部門審査委員長は、「今、映像で表現しなければならないテーマやメッセージをちゃんと込めている作品が、どんどん登場してきています。日本でいろいろな映画祭が行われているけれども、日本映画の現在を知るうえで、その年の最も優れた作品が選ばれて上映されていると自信を持っております」と断言。8年連続して短編部門の審査委員長を務める自負がうかがえた。

 最後に、氷川竜介アニメーション部門審査委員長は、アニメーションが映像の根幹に関わるところから出発していることに触れつつ、「若手作家にチャンスを与えるという意味でも映画祭の審査を務めることができ光栄に思っております。そして、これをきっかけにアニメーションの持つ表現の可能性、あるいは自分でもやってみたいという触発性を求めて多くの観客が来場されることを心から願っております」と観客を通じたアニメーションの広がりを求めた。

 映画祭実行委員が主体となり製作するオープニング作品の上映も今年は2回目ということもあり、映画祭が掲げる若手育成について触れる登壇者も多かった。八木信忠映画祭総合プロデューサーが、「SKIPシティは、映像産業を発展させていく場所であり、本映画祭は、そのために必要な人材を育てていくという目的で開催されている点が、ほかの映画祭と異なる、本映画祭の特徴と言える」と言及したほか、桝井短編部門審査委員長も、「(SKIPシティ映画祭は)ちゃんと次回作のチャンスを与えて、場合によっては評価された作品の一般公開も行う。受賞した後、映画作家は苦労するんですね。評価されたけれども次にどこに行けばいいんだろうと。そういう意味で、この映画祭は丁寧にフォローして支えている。しかし、このことがなかなか知られていない」と映画祭の取り組みを賞賛しつつも、周知に至らぬ点を懸念した。

 「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2016」は、7月16日(土)から7月24日(日)にかけて、埼玉県川口市にあるSKIPシティにて開催される。